Giro d’Italia 2024 Wine tour
すでに前評判からタデイポガチャルによる独唱劇で、レースがつまらなくても誰も寝てはならぬなどと本人が歌うことになるのではないかなんて言われているとか言われていないとかと話題の 2024 年の Giro d’Italia。しかし、早々に総合勢の決着がついてしまったら、俄然熱くなってくるのはステージ優勝争い。わずかなチャンスをものにしようと若手、ベテラン、アシスト、色々な選手が色々な思惑で動けるステージがたくさんあるのもまたグランツールの醍醐味であります。
ということで、今回は神宮前にある La Cantina BESSHO でルートで通過するイタリア国内のいくつものワインの産地から 11 本のワインを選んでみました。山のようにあるイタリアのワインが魅力のお店です(個人の感想です)。
毎度のことですが、この記事を書いている時点ではレースは始まっていないため、ワインもまだ 1 本も飲んでいません。よってワインの味や感想を期待しても何も出てきませんので悪しからず。レースと一緒にワインを楽しもうという方がもしいたら参考になったらいいですね、という程度の気持ちで書いてます。地名の表記揺れは気にしないでください。
ところで、Giro d’Italia 公式ウェブサイトは全面占拠型の広告が増えましたし、相変わらず勝手にページ再読み込みをするのでサイトに滞在して得られる体験がどんどん悪くなっています。ルートの詳細を確認する程度のことであれば各自転車メディアの記事を確認すればいいと思いますが、公式が Strava でルートを作ってくれているので簡単にルートをトレースできるようになったのはいいですね。
- 前述のとおり今年は第 1 ステージからイタリア国内、トリノ周辺をルートにした概ねフラットなルートです。1 本目のワインはそのトリノの南東に広がるランゲ地区、もっと言えば第 3 ステージの第 2 中間スプリント地点のすぐ横のタナーロ川を挟んですぐのところにある Fratelli Alessandria の Langhe Nebbiolo Prinsiot 2021 です。第 3 ステージは尾根沿いに進むプロトンを囲む葡萄畑、高台や集落などを収めた遠景がとても良いコースだと思いますし、ワインもやはりピエモンテ州を代表する地域のワインを飲むのが極上です。選んだワインはネッビオーロ種で作られた王道ですが、ほぼ平坦の第 3 ステージは王道のスプリントフィニッシュとなるのでしょうか。そういえば第 3 ステージのスタート地点は 2021 年の Giro d’Italia 第 2 ステージでティムメルリールがその他のスプリンターを抑えて勝利した場所ですが、アルペシンフェニックスに所属していた彼はまだ当時はどちらかといえばダークホース扱いだったように記憶しています。
- 今年は第 4 ステージ、第 5 ステージとリグーリア州、そしてトスカーナ州の海岸沿いを進むプロトンに合わせて、リグーリア州都ジェノバの近くのワイナリー Villa Cambiaso の E Galêe Val Polcevera Bianco を。この地域といえばヴェルメンティーノ種ということで、2 年前はチンクエテッレのワインを選びましたが、今年はヴェルメンティーノ 100% のワインです。レースの方はどちらのステージもスプリンターをふるい落とすような仕掛けはありませんので、スプリンターたちは脚のフレッシュなうちに勝利をもぎ取りたいところです。
- 少しステージが飛んで、第 11 ステージ。今年はティレニア海側からアドリア海にやってくるプロトン。この辺りは地形的に平坦レースが多いので、総合勢は 2 度目の ITT に備えるし逃げるには単調すぎるということで、1 週目の最初にスパイスを散りばめたグランツールもこの地域のワインほどはスパイス香を感じられない平凡なレースになりそうです。ワインは第 2 中間スプリント地点に程近い場所にあるワイナリー、Cantine Mucci の Cerasuolo d’Abruzzo を。今回唯一のロゼはこの地域では主流のモンテプルチアーノ種で作られています。Vini Fantini のお膝元ですね。
ちなみにいろいろワインを選んでいて、うっかりトスカーナ州周辺のワインを選び損ねてステージをいくつか飛ばしてしまいましたが第 9 ステージ、ナポリといえば 2022 年にトーマスデヘントが 2012 年にステルビオ峠で逃げ切って以来 10 年ぶりの逃げ切り勝利で沸いた地であります。2024 年は第 11 ステージまでの間に 6 ステージほど、いわゆる平坦基調のステージがありますが、逃げ切りが発生するようなステージが一つくらいあるといいなとは思います。まぁ第 6 ステージなんかもそう言う意味ではなにか起こりそうではありますが、個人的にはマッシュアップみたいなステージは必要ないかなとは思っています。 - ということでスプリンター向きのステージではないといえば、この第 12 ステージがそうかもしれません。アドリア海に出たプロトンは海岸沿いを北上し、アブルッツォ州からマルケ州へ。(相対的に)小さな登り降りが何度も続くこのステージでは、スプリンターに勝たせたいチームが積極的にレースをコントロールしなければ単純なスプリント勝負で決着がつきにくそうなコースレイアウトと言えるでしょう。スタート地点がアブルッツォとマルケの州境にあるならワイナリーも州境に、ということで第 12 ステージのスタート地点から 25 キロほど山側のアスコリピチェノにある Valter Mattoni の Trebbien 2015 を。
- マルケ州からエミリアロマーニャ州に抜ける(あるいは逆)ルートはお馴染みのど平坦ルート、ワインもお馴染みのランブルスコです。第 13 ステージのフィニッシュ地点チェントよりやや西、モデナの北側で作られるソルバーラ種 100% の Cavicchioli の Lambrusco Rosso Vigna Del Cristo をお供に。スプリンターはこのステージを最後にしばらく出番がありません。この頃には仕上がったスプリンターとそれほどではなかったスプリンターで大きく成績が異なってくることでしょう。例えば誰かの連勝、例えば色々なスプリンターの勝利、例えば帰宅してしまったスプリンター。ローマまで生き残ることができるのか、それともここで成績を残して(残さずに)帰ってしまうのか。
- 2 回目の休息日の前にフランチャコルタが飲みたいのです。ということでロンバルディア州に入って、本大会 2 回目の ITT となる第 14 ステージではなく、北イタリアの山岳地帯に入っていく第 15 ステージのルート上、イゼーオ湖の近くのワイナリー、Cavalleri の Franciacorta Blanc de Blancs Brut Nature をいただくことにします。ITT のあとの 1 級山岳 3 連発。この時点で総合争いがもつれているのであれば相当意味が出てくるステージになると思っています。そうでなければ休息日前に全力でステージ勝利をとりにくる選手の走りを見ることができるのではないでしょうか。例えば表彰台候補としてベンオコーナーなんてどうでしょうか。
- 2 回目の休息日明けはボルミオ側から登るお気に入りのステルヴィオ峠を経てボルツァーノ方面に西に抜ける第 16 ステージ、そしてそのままセッラ峠を抜けて南にいくつかの山岳を越えていく第 17 ステージ。選手たちは景色もワインも楽しむ余裕はないと思いますが、私はトレンティーノアルトアディジェ州のワインが好みで特に用がなくても選んで飲んでいますので、今回は 2 本。Franz Haas の Alto Adige Moscato Giallo 2022 と Alois Lageder の Alois Lageder Lagrein 2016 を。もちろん総合勢にとっては重要なステージであることは間違いありませんが、どちらのステージもレース序盤に山岳ポイントを稼げる登りがあることから、山岳賞ジャージを取りたい選手にとってもとても重要なステージになると思います。つまり可能な限り先行してポイントを取ることに意味を見出している選手が複数いればそれがレースそのものを動かす可能性があるということです。なお、景色も最高ですね。
- 第 18 ステージのフィニッシュ地点パドバからフリウリヴェネツィアジュリア州のウディネの南に移動したプロトンは、第 19 ステージでまたアルプスに向かっていきます。登り自体は強烈なものではありませんし、次のステージでモンテグラッパを 2 度登る都合上、総合勢の動きは少なめになるのでしょうか。
ワインに関して言えば昨今自然派のオレンジワインで注目を集めている地域です。まぁそれはつまり白ワインの大きな生産地ということで、今回はこの地域の白ワインの生産に大きな影響を与えた Schiopetto の Ribolla Gialla Venezia Giulia を選んでいます。ワイナリーは第 19 ステージのスタート地点からも近いです。 - 第 20 ステージの4級山岳。去年、一昨年とプロトンがヴェネト州を通過した時にはこの地域で生産されている代表的な品種、ガルガーネガ種を主体として作るソアヴェを選びましたが、今年はグレーラ種から作るプロセッコということで、Le Contesse の Luna d’Or Prosecco Rose Brut を。発泡酒が不足しがちなリストにプロセッコを追加します。なにせ最終ステージがミラノからローマになってしまうと最終日に泡という選択ができなくなってしまうわけです。去年も書きましたが大会スポンサーの Astoria は入手性がよくないので知らなかったことにしています。
レースの方は前述の通り、モンテグラッパを2度登りますが、Zwift じゃないんだから同じところを 2 度も登らなくても、と思います。私は同じ日に同じワインを 2 本飲んだりはしません(?)。 - 最終ステージはローマ。ラツィオ州は白ワインの生産が多い地域ですが、土着品種のチェザネーゼ種で作る赤ワイン、Damiano Ciolli の Olevano Romano Silene 2021 を選んでいます。ローマの郷土料理トリッパの煮込みとかカルボナーラとかそっちの方が合いそうな気がするのですが、実際のところどうなんでしょうか。
昨年大会の最終ステージ、同じくローマでマークカヴェンディッシュが引退を前にして最高のステージ勝利をもぎ取ったのが印象的でしたが、結局プロトンに戻ってきました。そういえば去年自転車メディアではどこも「ローマは一日にして成らず」みたいなことを言っていなかったように記憶していますが、今年も下馬評通りタディポガチャルが勝つなら、この言葉の出番はなさそうです。
以上が、2024 年の Giro d’Italia に合わせたワインリストでした。今年も去年とは違った生産者のワインをたくさん選ぶことができたので、あとはレースの開幕に合わせて飲むのが楽しみです(コピペ)。