Tour de France 2022 Wine Tour
今年は延期となっていたデンマークのコペンハーゲンからのスタートとなるツールドフランス。post-COVID 感をあちこちで目にする昨今ですが、直前のツールドスイスでは感染者を出してチームや選手が途中退場することになったり、市中での感染が再拡大している予兆が見えたり見えなかったりとあまり楽観できない中での開催となります。
そしてレースや選手の心配もあるのですが、やはりここで一番の懸念はワイン。出発地点となるデンマークはワインを作ってないことはないようなのですが、残念なことに見かけません。さらに悪いことには、フランス国内に戻ってきても多くのステージでワインの産地を華麗にスルーしてしまっています。しかし何も恐れることはありません。このような機会を通して新たな土地、新たな生産者のワイン、文化などを知ることが楽しいのです。
ということで今年は結構無理やりな感じでお送りします。
例の如く、これを書いている時点ではツアーは始まったばかりで、しかも前述の通りしばらくワインの出番はありませんのでワインの味とか感想は一切ありませんので悪しからず。
なお、今回のワインは恵比寿、現在改装中の Wine Market Party では買い物ができないので、 La Vinée で買い揃えました。(ステマじゃないよ)

- 早速 1 本目ですが、なんと第 6/7 ステージまでおあずけです。ちょうど第 6 ステージのゴール地点と第 7 ステージのスタート地点の間にあるワイナリー、Molozay — Chateau de Vaux の V.D.F. Hors Piste Vignoble Ste. Francoise 2019 を。第 7 ステージはクリスタルで有名なバカラのバカラ村から西に数キロの地点を通過するので、酒飲みはバカラのグラスで臨みたいところですが、選手たちはここから本格的に上りで脚を使っていくことになります。フィニッシュ地点のプランシュ・デ・ベルフィーユといえば 2020 年にタデイポガチャルが ITT で驚きの総合優勝を決めた場所ですが、今年はまだまだこれから。平坦基調のステージを終えてマイヨジョーヌを取りに動くのは誰でしょうか。
- 2 本目は第 8 ステージのスプリント地点から南西に数キロほどの村に蔵元を構える生産者、Domaine Christelle et Gilles Wicky の Jurassique (Vin Orange) 2018 を。ジュラシークの名の通りジュラ地方のワインですが、これは珍しいオレンジワインです。やっとルートに合わせてフランスのワインを選べると思いきや、またすぐスイスへ行ってしまうプロトン。
- 3 本目はいきなり番外編なのですが、2 本目のワイナリーから南に 50 キロ弱のところにある、Domaine De la Dentelle の Bugey Cerdon Methode Ancestrale S.A. です。いわゆるサヴォワ地方のロゼスパークリング、セルドンの一つですが、とても気に入ってよくリピートしています。どのルートからも離れてはいますが、せっかくこの地方を通過するので追加しておきましょう。
- 4 本目は休息日明けの第 11 ステージのスタート地点、アルベールビルから西に 20 キロほど、サヴォワ地方の Domaine Dupasquier の Savoie Gamay 2018 を。このステージのテレグラフ峠からガリビエ峠、そしてセールシュバリエに向かうルートは 2017 年にプリモッシュログリッチがワールドツアーで初勝利した場所であり、クリスフルームはマイヨジョーヌを守り、ナイロキンタナは…といったドラマがある場所ですが今年はさらにもうひとつグラノン峠が追加されています。さて、どのようなドラマが待ち受けているのでしょうか。
- さて、アルプス山脈を抜けたプロトンは第 13 ステージからローヌ川を渡って中央山塊に入りピレネー山脈に向かっていくわけなのですが、ピレネー山脈は元より中央山塊上に引かれたルートの周辺にもワインの産地はあまりありません。ということで、こちらのワインツアーはローヌ川を南下してローヌ地方を行くことにします。まずは南ローヌ、ジゴンダスから Xavier Vignon の Gigondas Archane L’hermite 2016 を 5 本目として。ジゴンダスを知らない自転車乗りでも東に 20 キロほどのところに昨年の第 11 ステージでワウトファンアールトが驚きのステージ優勝を飾った「魔の山」モンヴァントゥーがあると言えばなるほど、となるでしょうか。モンヴァントゥーで有名な風はこの地区に吹き下ろし、冷涼な気候を形成しています。
- 続いてアヴィニョン近郊、リラック地区の蔵元、Domaine Lafond Roc Epine の LiRac La Ferme Romaine 2019 を 6 本目に。南西に 20 キロほどのところに世界遺産の水道橋、ポンデュガールがありますが、その付近はそのまま 2019 年のツールドフランス第 16 ステージのルートでした。その時はカレブユアンが集団スプリントで勝利しています。ちなみにモンヴァントゥーもこのポンデュガールも Zwift のフランスのルートにありますね。
- 南仏ミニツアーの最後はラングドックから、モンペリエから北西に20キロほどのモンペイルー村の蔵元 La Jasse Castel の Coteaux Du Languedoc La Pimpanela 2019 を 7 本目として。モンペリエといえば、2016 年の第 11 ステージは忘れられません。カルカッソンヌを出発し集団スプリントで終わる平坦ステージの一つと思われていたステージが継続的な横風により荒れ、更にラスト12キロでマイヨヴェールのペテルサガンとチームメイトのマチェイボドナールのアタック、そしてマイヨジョーヌのクリスフルームとゲラントトーマスの追走、合流により混乱を極め、協力的に先頭交代を繰り返したこの 4 名が結局そのまま集団を置き去りにしてゴールする驚きのレースに非常に興奮したものです。
- 話は戻って、8 本目はツールドフランスにおいてほとんど無視されることがないポーのすぐ隣、ジュランソンワイン生産地の Chateau Lafitte の Jrancon Sec 2018 を。一応第 18 ステージのルートから北西に 20 キロほどの地点のシャトーですが、なぜポーを通らないのか(調べていません)、なぜジュランソンのワインを飲まないのか、ということで勝手に飲みます。山岳ステージはこの第 18 ステージで最後となりますので、マイヨアポア、そして総合優勝争いの行方も概ねここで決まってくるでしょう。
- 9 本目は第 19 ステージのスプリントポイント地点を通過して 4 級山岳の手前、ガロンヌ川の辺りから西に 40 キロほど、ビュゼ地方の Domaine Du Pech の VDT QV 2017 を。この辺りでは珍しいビオのオレンジワインです。スプリントポイント地点といえば、最終ステージを残して最後の平坦ステージとなるこの第 19 ステージはおそらく集団スプリントでのフィニッシュになると思われますが、このステージのようなフィニッシュ地点が微妙な上り坂になっているステージはちょっと番狂わせがありがちというか、ちょっと普段とは違うスプリンターが勝つことがあるので個人的に好みです。
- 昨年と同じく第 20 ステージはボルドー地方で ITT…と言いたいところですが、今年はボルドー地方よりもかなり東、ほとんど中央山塊の周辺での ITT です。ところがこの辺りはあまりワインを作っていないので、勝手に昨年と同様にボルドー地方の東、ベルジュラック地区にある Chateau Moulin Caresse の Montravel Sec Sauvignon 2019 を 10 本目として選びました。今年の総合優勝争いはこの ITT までもつれ込むのでしょうか。
- さて、最終ステージの前に番外編その 2。今年のワインツアーのワイン選びをややこしくしてくれた中央山塊で大きな都市といえばクレルモン=フェラン。自転車に関していえば、近年自転車用のタイヤの供給も始めたミシュラン、そしてクレルモン=フェランの TGV、レミカヴァニャですが(今年のツールドフランスには出場していません)、そのクレルモン=フェラン近郊のオーヴェルニュ地方のワイン Domaine De La Croix Arpin の Cote D’Auvergne La Frondeuse Blanc 2019 をツアー終盤に挟んでおきます。
- そしてついに最終ステージ。去年と同じくシャンパーニュ地方を通過しなかった 2022 年も、しかしシャンパーニュで締めます。毎度のことながらツールドフランスの公式パートナーである Castelnau のワインは日本で見かけないので仕方がない、などと言いながら毎年のように色々なシャンパーニュを試しているのですが、今年はシャンパーニュ地方の北端に位置する Champagne Miniere F&R の Brut Zero S.A. 2013 を。実は第 3 ステージの3級山岳から南に 100 キロほどのところです。生産本数がかなり少ないワインですが、ツールドフランスの方は COVID、落車などで出走者が少なくならないよう祈るばかりです。
以上でツールドフランス 2022 に合わせたワインリストでした。
